ロスチャイルド家の歴史と背景
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敵国を通って軍資金を運べ!

とあるパーティーの席で、晩年のネイサンが「生涯最高の仕事は、フランスを経てウェリントン将軍のもとに金を届けたことである」と告白しています。その輸送方法は、敵中を堂々と突っ切る、非常に大胆なものでした。まず、金貨を携えたネイサンは、いつも使用している密輸ルート経由でドーバー海峡を渡り、敵地のパリに潜入。続いて、パリに送り込んでいた末っ子のジェームズがスペイン銀行のパリ支店で手形に換え、ピレネー山脈を越える。そうして、軍資金に困窮していたウェリントン将軍のもとへ、軍資金を運んだのです。もちろん、パリの警備当局が金塊の動きを察知できなかったわけではありません。ジェームズが事前に「イギリス政府が金の流出を阻止しようと必死だ」という情報を流していたため、密輸の罪を問われるどころか、「敵国イギリスを苦しめるとはすばらしい」とほめられさえしたのです。

情報の速さは金を生む

1815年6月ワーテルローの戦いが勃発。ウェリントン将軍の勝敗次第で、イギリス国債の価値が大幅に変わってしまう、という運命の戦いです。勝利の情報をいち早くつかんだネイサンはロンドンへ向かい、これから価値の上がるイギリス国債を買うどころか売りに走ります。その時点で勝利を知らない市民は「負けた」と思い込み、我先に国債を売りました。そして、勝利のニュースが広まる直前、ネイサンは大暴落していた公債を買い戻し、大利益を得たのです。「情報は金になる」をまさに実践した瞬間です。